YURAGI STYLE

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実生ゆずが結んだ1枚の手紙

2023.05.15

山の中に続く一本の細い道を歩いていると、突如、視界が晴れ、光に満ちあふれた谷間が出現して、急斜面にどっしりと根をはる巨木の枝には、黄金色に輝く果実がたわわに実っていた。

私達は、実生ゆずの地に到着したようだ。

「もう、ほんと最初に来た時はびっくりしました。こんな山奥で実生ゆずが栽培されているなんて。私も箕面の出身なんですけど、実生ゆずと巡り会うことがなければ、ここへくる事はまず無かったと思います。でも今ではこの道を歩くのにも、ずいぶんと慣れました。」

農家の方と信頼関係を築くために、何度もこの地を訪ねてきたという。

「岡山さんは、実生ゆずのプロジェクトを止めようと思われたことはないのですか?」
「そりゃ、何度もありましたよ。でも絶対に止めることはできないんです。」

突然立ち止まり、バックの中から一枚の紙片を取り出し、見せてくれた。

「その手紙は、はじめて開発した実生ゆずの商品をお使いになられた方からいただいたものです。」

そこには、障がいをかかえ、ベットでの生活を余儀なくされた娘さんを在宅介護している母親の声が綴られていた。

「首回りの清潔を保つことが難しくて、今までは石けん&ホットタオルで洗っていたのですが、常時、首が密着しているため、赤くなりやすく、時には皮がめくれてびらん状態に・・・そのたびに塗り薬をぬり、悪化を繰り返していました。そんな時、呼吸リハビリにきていた先生から『ゆずボディウォッシュウォーター』を教えてもらいました。使ってみてびっくりです。ツルンツルン・ピッカピカ。これは魔法なの、と感激しております。これからもずっと使わせて頂きます。」

「私はこの手紙をいただいた瞬間から、たとえ私一人になったとしても、この商品は守り続けると決めたんです。」

強い信念を持ち続けている人のみが持つ、優しくも威厳に満ちたまなざしが、そこにはあった。

「他の人に二度と同じ思いはさせたくないんです。」以前、聞いた言葉が蘇る。

フィトセラピストになった原点が、夫の介護と死別という辛い出来事にあった。そこから今日にいたるまで、植物のチカラを最大限に活用した病気を防ぐケアを追求し続けている。

だからこそ、手紙主の母親の気持ちが痛いほど理解できたのだろう。少しでも病や老いによる肌のトラブルを防ぎたい、そして同時に、介護者の負担も同様に軽くしたい、そういう思いが強くあるのだろう。

彼女たちの生み出す商品の本質は美容ではない。もっとも、その美容的効果は科学的に立証され、それが商品の魅力になっているにせよ、その本質は変わらぬケアに対する強い使命感である。だからこそ、どのような困難が待ち受けていようとも、この道を進むのだ。

突然、老人の太い声で呼びかけられる。

「岡山さん、待っとたで!」

彼女もそれに答えるかのように、小走りで足下に向かう。
とても親密そうな空気が二人を包んでいるように見える、どうやら今年の収穫の様子を確認しているようだ。

実生ゆずによって生まれるものは、商品だけではないようだ・・・